第76回豊岡市美術展

どれも他にはない力作が並び、招待作品14 点の中から１点選ぶのは苦労しました。この作品はシャガールを思い起こし、遠目からでもひと目で吸い寄せられました。風景が歪み、混沌とした現代(いま)を単調的にわたしたちに語りかけてくれるようです。　（内藤）

自分のスタイルを持っている作品です。大阪万博の大屋根リングなど現代の新鮮なイメージも取り入れ、緻密で丁寧な作風は一度見たら忘れられません。タイトルの『紙飛行機が飛んだ日』については、謎であり、観る者に絵画の味わいを残してくれます。 （内藤)

何気無い日常に目を向け、大胆な構図と高い描写力により、うまく表現しています。一番に目を引かれた作品です。 （熱田）

大胆な線表現で力強く見えますが、余白（書かれていない部分）が実に美しく、作品をより大きく見せています。横作品独特の難しさ（横展開）はありますが、多くの人に挑戦してほしいです。作品にその人の個性が現れることは書道に限らず、芸術・美術には最も大切なことではないでしょうか。

今回調和体作品を選びました。昨今、全国展でもこの分野（調和体）が注目されつつあります。日本の文学文化を考える時、漢字とかなは別物では無いはずです。今回選んだ調和体（漢字かな交(まじ)り文）の書も書芸術を担う大切な書になっていって欲しいものです。

隷書の多字数作品の難しさのひとつは、横に段差無く整正に仕上げることですね。縦に揃えるだけでも難しいです。起筆、収筆、払い（八分(はっぷん)）も実に丁寧で正確に書けています。ここまで出来れば申し分無いですが、敢えて一言…雅印の篆刻も頑張ってみよう！

陶芸家の生きざま、作品制作に打ち込む迫力が訴えかけてきます。右手の力強さとそれに連動する左手の動きの表現が絶妙です。これをとらえた作家の人がらも滲み出ています。

主題となる人物の表情が実に魅力的で、周りをぼかすことで一層強調された傑作といえるでしょう。カメラ操作に熟達された作者の写真愛がほとばしっています。益々の御活躍をお祈り致します。

卓越した技術と、陶の魅力に溢れた作品です。力強い立ち姿と神経の行き届いた口づくりが印象的で、内部にみられる轆轤の跡が土とのやりとりを想像させ、作者の動きを感じさせます。つくる事とつくられる事が交じり合った表現となっていて、やきものの魅力を十二分に発揮しています。 （上田）

作者の軽やかな見立てと確かな構成力により、流木を用いて物質とイメージを結びつけた、力強くも儚い、大きな世界観をもつ作品です。木々のこれまでの時間、木々と作者のやりとりの時間、これからの時間、大きな自然サイクルと私たちの営みとの関係を思い起こさせます。　(上田)